ADHDの実行機能障害について、ワーキングメモリーの意味は?

ADHDの人にみられる不適切な判断や行動の原因は、脳の実行機能の障害によるものと考えられています。

目標達成のために自分を生後し、状況や場面に応じて行動していく実行機能とADHDにはどのような関連性があるのでしょうか。

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脳の実行機能とは?

ADHDの特徴的な症状である、不注意、多動性、衝動性などの行動特性は、本人の意思が弱いことや性格がわがままだからということではありません。

その裏付けとして、脳の実行機能と呼ばれる働きがあります。

実行機能とは、その場の状況や場面を的確に捉え、うまく対処するにはどのような反応や行動をとればよいかと判断し、実行する機能を意味します。

実行機能にはいくつかの要素があり、それぞれが相互に作用しながら働いているものと考えられています。

ADHDに関係する実行機能について

アメリカの精神科医トーマス・ブラウンは、ADHDに関わる「実行機能」を次の6つの要素に分けて、その一部または全部の機能障害のため、ADHD特有の症状があらわれると説きました。

①取りかかり
課題を整理し、優先順位をつけて取りかかる機能

②焦点化
課題に対する注意の焦点化、注意の保持、注意の移動を適切に行う機能

③努力
課題を遂行するために意識を覚醒させ、努力を続け、適切な処理速度を維持し調整する機能

④感情
欲求不満を管理し、感情を調整する機能

⑤記憶
ワーキングメモリー(作業記憶)を活用し、想起する機能

⑥行動
自分の行動を客観的に監視(モニタリング)し、必要に応じて自己制御する機能

不注意、多動、衝動の原因は実行機能の障害

ADHDの人の場合、こうした実行機能の働きに障害があり、その結果、不注意、多動性、衝動性といったADHDの特徴的な症状があらわれるのです。

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そして、課題になかなかとりかかれない、集中力が続かない、飽きやすい、忘れっぽい、感情のコントロールができない、などの行動となってあらわれます。

ADHDの症状の原因は、本人の性格や意思が弱いからではなく、脳の実行機能の働きが普通の人と比べて異なっているからなのです。

ワーキングメモリーの意味について

ワーキングメモリーとは作業記憶の意味で、課題や作業を行うために、必要な情報を一時的に記憶しておく機能のことです。

何かの作業をしながら頭のかなでは別のことを考えている体験は、誰にでもあることです。ですが、考え事をしていても作業をする手が止まらないように上手く自分をコントロールできるようになっています。

これは、作業について頭の片隅で意識していて、作業を進める指令を出す機能も同時に働いているからです。

こうした同時進行は無意識で行うことができますが、ワーキングメモリーが上手く機能していないと、ひとつの物事にとらわれ、他のことを忘れてしまう、という状態に陥ってしまいます。

他の発達障害も実行機能の働きが原因?

脳に実行機能という働きがある、という考え方は、まだ比較的新しい考え方です。

実際に、どれくらいの種類の実行機能があるか、については、はっきりとは解明されておらず、今後の研究に期待されています。

とはいえ、脳の中は複雑な神経回路によってつかさどられ、それぞれが相互に作用し、連携していることはほぼ間違い無いといわれています。

また、ADHD以外の他の発達障害の場合でも、いくつかの種類の実行機能の働きが弱いことが関係しているといわれています。

その中には、ADHDの原因となる実行機能と同じものがふくまれている可能性もあり、そのためADHDとよく似た症状があらわれると考えられます。

◆この記事は、お茶の水女子大学大学院教授である榊原洋一先生執筆・監修の「図解よくわかる大人のADHD(ナツメ社)」の内容に基づいて、当サイト運営事務局の心理カウンセラーが編集を行っています。

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