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大人のADHDの診断基準について、DSM-5での変更点は?

大人のADHDの診断基準は、基本的には子どものADHDと同じ診断基準が用いられ、最新版の診断基準である「DSM-5」では大人の症例を考慮した内容に変更されるようになっています。

そこで今回は、大人のADHDの診断基準、DSM-ⅣからDSM-5への変更点について、ポイントをまとめてみたいと思います。

ADHDの診断基準、DSM-5について

日本の精神医療現場において、診断基準として用いられているのは「DSM(精神疾患の分類と診断の手引き)」というアメリカ精神医学会が作成した診断指針です。

DSMは少しずつ内容にも変更が加えられて改訂されており、2017年現在の最新版はDSM-5のバージョンになっています。

DSM-5のひとつ前のバージョンであるDSM-Ⅳ-TRでは、ADHDの診断基準は子どもを対象とする内容になっていて、子どもの生活シーンや行動を想定する内容となっていたようです。

とはいえ、大人のADHDの診察においても子どもと同じ診断基準が使用されることから、最新版のDSM-5では子どもに限定するような表記が変更され、大人のADHDのケースにおいても使用できる内容に変わっています。

DSM-5での変更点は?大人のADHDの診断基準

DSM-Ⅳ-TRからDSM-5に改訂された際、大人のADHDを想定した診断基準の主な変更点は次の3点です。

【変更①】DSM-Ⅳ-TRでは発症年齢が「7歳以下」となっていたのが、DSM-5では「12歳以下」に変更された

【変更②】DSM-Ⅳ-TRでは、「診断項目を6つ以上満たすこと」となっていたのが「17歳以上では5つ以上」に変更された

【変更③】ADHDは、DSM-Ⅳでは子供の反社会的・非適応的な問題行動を指す「破壊的行動障害の一種」と位置づけられていたが、DSM-5では「脳の機能障害を前提とする発達障害の一種」として位置づけられた

また、ADHDは英語での「Attention Deficit Hyperactivity Disorder」の頭文字で、日本語では「注意欠陥・多動性障害」という意味に訳されていたが「欠陥」を「欠如」に変えた「注意欠如・多動性障害」と呼ぶようになってきています。

DSM-5以外の大人のADHDの診断尺度について

また、大人のADHDを診断する尺度として、診断基準DSM-5以外に、「CAARS」があります。

「CAARS(Conner’s Adult ADHD Rating Scales)」とは、大人のADHDの重症度を検査する心理検査のひとつで、アメリカのC・キース・コナーズ博士が開発した方法です。

CAARSでは、ADHDの3つの特徴である不注意、多動性、衝動性に関連する66の項目からなり、大人のADHDの重症度や診断する際に参考となり、一部の病院や専門施設で用いられています。

DSM-5でのADHDの診断基準について

子どもの例だけでなく、大人のADHDのケースも想定されるように変更されたDSM-5では、ADHDの診断基準は以下のよようになっています。

DSM-5における注意欠如・多動性障害(ADHD:Attention Deficit Hyperactivity Disorder)の診断基準

A1:以下の不注意症状が6つ(17歳以上では5つ)以上あり、6ヶ月以上にわたって持続している。

a.細やかな注意ができず、ケアレスミスをしやすい。
b.注意を持続することが困難。
c.上の空や注意散漫で、話をきちんと聞けないように見える。
d.指示に従えず、宿題などの課題が果たせない。
e.課題や活動を整理することができない。
f.精神的努力の持続が必要な課題を嫌う。
g.課題や活動に必要なものを忘れがちである。
h.外部からの刺激で注意散漫となりやすい。
i.日々の活動を忘れがちである。

A2:以下の多動性/衝動性の症状が6つ(17歳以上では5つ)以上あり、6ヶ月以上にわたって持続している。

a.着席中に、手足をもじもじしたり、そわそわした動きをする。
b.着席が期待されている場面で離席する。
c.不適切な状況で走り回ったりよじ登ったりする。
d.静かに遊んだり余暇を過ごすことができない。
e.衝動に駆られて突き動かされるような感じがして、じっとしていることができない。
f.しゃべりすぎる。
g.質問が終わる前にうっかり答え始める。
h.順番待ちが苦手である。
i.他の人の邪魔をしたり、割り込んだりする。

B:不注意、多動性/衝動性の症状のいくつかは12歳までに存在していた。

C:不注意、多動性/衝動性の症状のいくつかは2つ以上の環境(家庭・学校・職場・社交場面など)で存在している。

D:症状が社会・学業・職業機能を損ねている明らかな証拠がある。

E:統合失調症や他の精神障害の経過で生じたのではなく、それらで説明することもできない。

◆この記事は、お茶の水女子大学大学院教授である榊原洋一先生執筆・監修の「図解よくわかる大人のADHD(ナツメ社)」の内容に基づいて、当サイト運営事務局の心理カウンセラーが編集を行っています。

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