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ナラティブアプローチとは?意味と定義を簡単に|臨床心理学

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「ナラティブアプローチ」とは、1990年代に生まれた概念で、従来のアプローチ法とは少し違う、新しいアプローチ法といえます。

現在では、心理学や臨床心理学の領域においても、「ナラティブアプローチ」の重要性について注目があつまるようになってきています。

そこで今回は、「ナラティブアプローチとは?」を中心テーマに、意味や定義を簡単にまとめてみたいと思います。

ナラティブアプローチとは?意味/定義を簡単に

「ナラティブアプローチ」の「ナラティブ」とは、日本語でいうと「物語」や「語り」という意味になります。

近いイメージの言葉だと、英語での「ストーリー」と似ている意味の言葉ですね。

「アプローチ」は、日本語で「近づく」「接近」「迫る」という意味の言葉です。

ですので、「ナラティブアプローチ」という英語を日本語に直訳するのであれば「物語に近づく」という意味になりますね。

この「ナラティブアプローチ」を簡単に定義するなら、「客観的な事実よりも、クライエントの語る物語を重視するアプローチ法」といえます。

ナラティブアプローチの考え方は?

ナラティブアプローチの考え方では、客観的な事実そのものよりも、その出来事に対してクライエントが持っている物語を重視します。

たとえ、クライエントの語る物語が事実と違い、偏見や先入観、つくりごとが混ざっていたとしても、クライエント本人が納得できる物語が、クライエントにとっての真実である、というのがナラティブアプローチの基本的な考え方です。

こういう点においては、ナラティブアプローは、ロジャーズのカウンセリングともよく似ていて、重なる部分も多いような気がしますね。

臨床心理学の基本的スタンスである「エビデンス(科学的キ根拠)」をベースとするアプローチでは、クライエントが語る物語(ストーリー)を理解することが難しくなります。

また、科学的根拠を全面に出す枠組みだと、多数派の意見が力を持つことになり、少数派の意見が軽視されがちです。そのため、「様々な意見を持つ人がいる」という現実をとらえきれないのではないか、という批判もあったようです。

ナラティブアプローチとエビデンスベイストアプローチの違い

臨床心理学の基本的理念のひとつに「エビデンスベイストアプローチ」があります。「エビデンス」とは「科学的根拠」の意味で、エビデンスベイストアプローチは「科学的根拠に基づいて心理的サポートを行う」アプローチ法という意味になります。

それに対して、ナラティブアプローチでは、客観的な事実ではなく、クライエント個人の物語やストーリーを重視する点に大きな違いがあります。

とはいっても、ナラティブアプローチが科学的根拠を重視するエビデンスベイストアプローチを否定しているわけではありません。

臨床心理学においては、その中心、基本は科学的根拠にもとづくエビデンスベイストアプローチにあり、その限界を補助的に補う位置付けとしてナラティブアプローチがある、というイメージになります。

ナラティブセラピーとは?

クライエントの語りを重視する「ナラティブセラピー」という介入方法があります。

ナラティブセラピーとは、簡単にいうと「クライエントが自分自身について語ること」を中心とした心理療法のことです。

クライエントが自分について語ることで、過去の出来事や体験に新しい意味を見つけ、自分の過去経験(物語)に納得することで、問題を乗り越える力をつけていく、という方法がナラティブセラピーの基本になります。

現代社会では自分自身の「物語=ナラティブ」が大切

もともと、近代化する前の社会では、宗教や神話の物語(ナラティブ)が文化の中心でした。人々は、比較的小さい地域共同体の社会で生活をし、その共同体が持つ宗教や神話の物語による規律やルールに従って暮らしていたのです。

ですが、近代化によってそうした地域共同体が解体され、宗教的な物語(ナラティブ)が弱体化しました。

そのため、近代化によって人々は心のよりどころを失い、精神的な不安や孤独感を感じやすくなっていきます。そうした心理的ストレスを解消するために生まれたのが心理療法でした。

現代社会は、グローバル化が進み、膨大なの情報に囲まれている情報社会です。

IT化、情報化が進んだことで、インターネットなどの情報ツールを活用し、多様な生き方の物語を気軽に知ることができるようになっています。

その反面、自分自身の生き方、自分の物語(ナラティブ)を見失う可能性も高くなってしまったのです。

情報に溢れる今の時代において、自分自身の物語(ナラティブ)は、自分らしく生きて行くためにも重要となっているといえ、臨床心理学においても「ナラティブアプローチ」は重要なキーワードになっているといえます。

まとめ「ナラティブアプローチとは?」

・ナラティブとは、物語、語りの意味
・ナラティブアプローチの簡単な定義は「客観的な事実よりも本人が語る物語を重視するアプローチ法」となる
・ナラティブアプローチでは、たとえ事実とは違っていても本人が感じている物語を真実であると考える

この記事は、次の文献を参考に記事編集しています。

参考文献
・臨床心理学を学ぶシリーズ(東京大学出版会)
・よくわかる臨床心理学(ミネルヴァ書房)
・テキスト臨床心理学(誠信書房)
・臨床心理アセスメント入門(金剛出版)
・徹底図解 臨床心理学(新星出版社)

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